1 私心にとらわれない
松下幸之助さんの本を私はたくさん読んできましたが、その中でも好きな本の1つに「素直な心になるために」という本があります。「素直」ということをとても大切にされた松下さんらしいタイトルの本です。
この本の冒頭に素直な心のあり方の1つとして、今回タイトルに挙げた「私心にとらわれない」という言葉が出てきます。私心とは「自分だけの利益や欲望にとらわれる」ということです。
もちろん私たちは、「私心にとらわれない」と言っても、なかなかそれは難しく、松下さんも、次のように述べておられます。
「私心が全くない、というような人間は、いってみれば俗事を超越した神の如き聖人であって、お互い凡人がそう簡単に到達しうる境地ではないと思います」(*)
余談ですが、松下さんの本を読んでいると、「凡人」という言葉が出てきます。松下さん自身が自分を「凡人」と思われていることにも驚かされますが、だからこそあそこまで素直に謙虚になれたのだとも思います。
また、上記の言葉に続いて、松下さんは「やはり、普通の場合は、それなりの私心を持って日々の生活を営み、活動を続けているのが、お互い人間の姿といえるのではないでしょうか。またそれはそれでよいと思うのです」(*)と述べておられます。そうなのです。私たち凡人は、なかなか私心から抜け出せないものなのです。
しかし、さらに文章は続き、「私利私欲の奴隷になってはいけない」「私心にとらわれて物を考え、事を行うということになると、やはりいろいろと好ましからざる姿がおこってくる」という主旨の言葉も残されています。